最後のコトバ
戸惑いながらも、あたしはおとなしくついて歩いた。
その帰り道、彼はずっと話していた。
あたしの家の方向を聞いたあと、他愛もない話しをしていた。
それに対して、相槌を返すだけ。
彼も、返事を望んでいる訳ではないみたいで、一方的に話しているだけだった。
それで楽しいのだろうかと、不思議に思う。
ほとんど話さないヤツと一緒にいるのは苦痛じゃないのだろうか。
だけど、彼の顔を見ると笑っている。
あたしには、理解が出来ない。
「あ……あたしんち、ここだから」
そうこうしているうちに、アパートの前に着いた。
ボロアパートに住んでいるなんて知られたくなかったから、少し手前でさよならしようと思ったのに。
「そっか。じゃあ、また明日な」
彼は、それ以上は何も言わずに手を振って去って行った。