最後のコトバ



それどころか、“また明日”と言われた。

そんなことを言われたのは初めてだった。


こんなに人と話したのも久しぶりのことだ。

優しさに触れたのも、いつぶりのことだろうか。



「こんなに優しい人が、まだいたんだ……」



つい、そんなことを呟いた。


だけど、すぐに首を振った。

流されちゃダメだ。

人は信用するもんじゃない。

簡単に信用すれば、自分が痛い目を見るだけだ。

そう自分に言い聞かせるようにして、目を閉じる。


人の優しさにも素直に喜べない。

嫌な人間だと思う。

だけど、そういう人生を歩んできたんだ。

そう簡単には変われない。




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