最後のコトバ
Episode.3*我慢の限界
「また明日」と言った通り、彼は毎日同じ時間に同じビルの屋上にいた。
あたしはあたしで、いつもの癖で屋上へ向かっていた。
毎日いると分かっているはずなのに、自然と足が向く。
そして、屋上への扉に手をかけて思い出すんだ。
そこで引き返そうとするけど、必ず彼が後ろから現れる。
どこかで見ているのだろうか。
それで逃げることが叶わず、他愛もないことを話すことになる。
本当にしょうもないことを話している。
今までのあたしにはなかった時間だ。
無駄だと思っていた。
誰かと一緒にいるより、1人でいる方がラクだと思っていた。
でも、なぜだろう。
彼といるのは苦ではなかった。
むしろ、居心地がいいとさえ思った。
もちろん、全面的に信用した訳じゃない。
自分のことは何も話していないのだから。