最後のコトバ



それだけならいいものの、人の彼氏に媚売っているだの、色目使っているだの。

酷いのは、寝取っていると言われたこと。

そんな事実、どこにもない。


だいたい、男とまともに話すことさえないのに。

噂だけが先行して、誰もあたしの言葉なんて信じてはくれない。


ただ、噂を流している張本人たちだって、これが真実だろうが虚偽だろうがどうでもいいんだ。

実際は、この人たちがあたしを気に食わないだけででっち上げているものだから。


あたしは、それに対して静観している。

声を上げれば、火に油を注ぐ結果になる。

言葉だけの攻撃なら、黙っていればいい。

だけど、それも日に日に追いつめられる。

それから逃れるためにここへ来る。

そして、人知れず手首に傷をつける。

その上、飛び降りようと塀に上る。


いくらここへ来たって、自分を傷つけたって、精神が安定することはない。

だからいっそのこと、自ら全てを終わらせようと一歩前へ出る。




< 2 / 83 >

この作品をシェア

pagetop