最後のコトバ
Episode.5*振り向いて、後悔ー智史sideー
梨華と初めて会った時、“俺と似ている”と思った。
もちろん、容姿とかではない。
雰囲気でもなく顔でもなく、目を見てそう思った。
なぜなら、2年前の俺と同じ目をしていたんだ。
2年前、それはまだ中学生だった時、俺は人の死を経験した。
それは、病死でも事故死でもない。
自ら命を絶った自殺だった……。
その相手は、唯一の肉親であった姉だった。
俺は、両親を亡くしている。
それは病死で、小さい時だったため、正直覚えていない。
そのため、親からの愛情や温もりを知らない。
その代わり、姉が温もりをくれた。
8つ上の姉が親代わりとなって、俺を育ててくれた。
姉以外の身内を、俺は知らない。
両親の葬儀も覚えがないから、親戚も分からない。