最後のコトバ
未だ寝たままのあたしを覗き込むようにして聞く。
焦っているからか、顔がやけに近い。
「だ、大丈夫です……」
真っ直ぐ見ることは出来ず、視線を彷徨わせながら答える。
まだ体が痛くて、動かすことは出来ない。
そのため、彼から逃げることも出来ない。
顔が近いから、少し離れて欲しいのに。
彼は気にしないのか、離れる気配はない。
おそらく、あたしの顔は真っ赤のはずだ。
だって、ドキドキが止まらない。
「良かったぁ。なかなか目を覚まさないから、心配した」
安心して脱力した彼は、またあたしの手を握る。
その瞬間、一段と大きく心臓が高鳴る。
あたし、どこかおかしいのだろうか。
ただこれだけのことでドキドキするなんて。