最後のコトバ



その言葉に驚いて、つい足を止めた。

そして、振り返った。

階段の上では、満面の笑みで立っている男が見えた。


あたしは返事をせず、踵を返して急いで階段を降りていった。

そして、逃げるようにして家に帰った。



「なんなんだ、あいつは」



必要最低限しか置いていない殺風景の家に帰ったあたしは、イラついていた。

同時に、新鮮な気持ちもあった。

今では、あたしに怒ってくれる人なんていないから。

関心を持っている人だっていない。

そんな現状を家が物語っている。

高校生なのに、ボロアパートで一人暮らし。

学校へ行きながらバイトをしている。

身内はいないし、頼れる人もいない。

学校の人たちだって、頼ることは出来ない。

所詮、赤の他人。

いつか裏切られる。

だから、誰にも心を許していない。




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