最後のコトバ
そう考えると、梨華が安らげる場所なんてないのかもしれない。
だから、誰も信用せず、無表情で暗く淀んだ瞳をしていたんだ。
俺と関わることで、少しだけ表情は出て来た。
でも、見たいのは心からの笑顔。
それをいつか、見ることは出来るのだろうか。
「それでも、智史とは少し慣れているみたいだし、長期戦だね」
皐月さんのこういう性格は、今でもスゴいと思う。
赤の他人の子に対して、寛容でいられる。
突き放すことはしない。
誰でも両手を広げて抱き締めてあげるような、広い心を持っている。
「でも……私が長期戦で良くても、智史はそうもいかないでしょ?」
ふと俺の方を見て、真剣な目をして言う。
俺は、それに対して何も言うことは出来ない。