犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
「ぅおっ、お、お…起きて、たんだ…?」
「そもそも寝てなかったからな。」
黒澤君はゆっくり上半身だけ起こし、座ったまま私を見る。
「は、はぁ!? ならさっさと起きてよ! 早く行かないと、先輩に怒られるんだからっ!」
何か良く分からないけど、無性に恥ずかしくなって意味無く怒鳴ってしまった。
「………」
すると黒澤君は、私から目線を落としうつむいた。
あっ…
黒澤君の様子に、私はすぐさま後悔した。
「あの、えっと…ご、ごめん…急に怒鳴って…」
「…ふっ…くくっ…」
「……へ?」
笑っ、てる…?
…え、何で?
「あ、あの…?」
「…あぁ、ごめん。面白いくてつい…」
「え? お、おもしろ…?」
どこに笑う要素が…?
はてなマークを並べる私を見て、黒澤君は笑いを噛み殺しながら言った。
「いきなりうるさくなったと思えば、相手の表情一つで急にコロっと変わるもんだから…」
「な、なによそれっ! 馬鹿にしてるの!?」
「あー、はいはい。これやるから機嫌直せ。」
頬を膨らます私に黒澤君がポケットから出したのは、ブドウ味の飴玉だった。