犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
えーっと、確か私は向こうに行けばいいんだよね…
うわぁ…やっぱりだけど、ほとんど3年生ばっかだ…
あんなとこ、居づらいよ…
「…おい」
そんな事を考えていたら、突然後ろから声をかけられた。
「黒澤君! どうしたの? 集合場所はこっちじゃないでしょ?」
「馬鹿、俺がそんなヘマするか。」
なっ!?
今! 確かに馬鹿って言ったな!?
「じゃあ何の用なのよ!」
馬鹿と言われついムキになってしまった。
けれど、黒澤君は気にしていないようで、少し間を空けてから答えた。
「アンカーで緊張してると思って、励ましに来た。」
「――っ!」
無駄なお世話よ!
…なんて言える余裕は、今の私には無かった。
その証拠に、握り締めた手が小さく震えている。
「…らしくないな。」
「うっ、うるさい! 私だって、失敗するの怖いんだからっ!」
「――…遥。」
「っ!?」
今までずっと城田だったのに、いきなり名前で呼ばれ私は過剰に反応した。
黒澤君の真剣な瞳と視線が交わる。
…目が、離せない。
「後ろは気にするな。前だけ見てろ。お前なら、絶対大丈夫だ。」