犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
「おーい、席つけー。HR始めるぞー。」
チャイムと同時に先生が入ってきて、HRが始まった。
「みんな、始業式の日にち忘れんなよー。それから…――」
今日で1年生が終わる。
新しいクラスは始業式に発表されるから、正確にはまだなんだけど。
窓側で一番後ろにいる私は、先生の話も聞かず外を眺めていた。
窓から見える景色は、まだ寂しいものだった。
「じゃあ、これでHR終わりだ。 みんな気をつけて帰れよー」
先生の気の抜けた声を合図に教室が賑やかになる。
「七海、帰りどっかよってかない?」
「あっごめん、あたしちょっと先生に用あるから…」
「そう? じゃあ教室で待ってるねっ」
「ありがと。遅くなっても文句言わないでね?」
なんて言いながら、七海は鞄を持ち教室を出て行った。
しばらく経つと教室は私だけになった。
自分の席に座り、校門を抜けて行く生徒をぼんやりと眺める。
「クラス替え、かぁ…」
どうなるんだろう…
最悪、七海と同じクラスになれなくても部活で会えるからまだいっか。
問題は黒澤君なんだよね…
「…やっぱり、告白なんて出来ないよ…」
静かな教室に私の独り言が響く。
それは誰も拾うことなく消えていった。