犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
2・紘貴side
俺、黒澤 紘貴には犬のような彼女がいる。
…彼女に対して犬なんて失礼?
でも、最初の印象がそれだから仕方がない。
あいつは1年のとき同じクラスで、毎朝教室に入る度に目に入った。
なぜか?
理由くらい分かるだろ。
「七海っ! 今日のお菓子は何??」
「あたしがお菓子持ってくるのは前提なのね…今日はマカロンよ。」
「おおぉぉぉっ! すごい!」
なんていうのは日常茶飯事。
その分、長谷川が休んだ日は恐ろしいくらいに静かだ。
他にも犬を思わせる理由はある。
男子にも負けない運動神経に、人懐っこい性格。
何より、色素の薄い茶髪に大きな瞳が犬を連想させていた。
そんな犬…じゃなく、遥と初めて話したのは入学して間もなくの頃。
最初の2ヶ月ほどは席は名簿順で、遥は偶然俺の隣だった。
ある日、俺は筆箱を忘れてしまった。
隣の人に貸してもらおうと思ったけど、女子の文房具にはかなり抵抗があった。
借りようか借りまいか悩んでいたら、俺の目線に気付いた遥がこっちを向いた。
「筆箱忘れたの? 私シャーペン2本あるから、よかったら使って。」