犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編

と言って差し出されたのは、黒と青のシンプルなシャーペン。

もろ俺好みのペンだった。

女子でもこんなの使うのかと貰ったシャーペンを眺めていたら、不思議そうに話しかけられた。



「…他にも何かいる?赤ペンとかマーカーとか…あ、消しゴムも2個あるからどうぞ!」



そう言って屈託のない笑顔で消しゴムを渡される。

よく見れば、筆箱やノートも機能面を優先させたようなシンプルなもの。

凄いギャップだな…もっと女子っぽい可愛さのあるやつかと思ってたんだけどな……

ってか、人懐っこい笑顔にも程があるだろ。少しビビった。

その時に一言二言ほど話しただけで、それ以降あまり関わることは無かった。

ただ男子の中じゃ、可愛いとか面白いとか結構話題になってたから名前は自然と覚えていたし、何かとセンスが良いっていう認識だった。

…そしていつの間にか、目で追っていた。

そんなある日、自分でも思いも寄らぬ事がおこった。

そう、体育祭の選抜リレー決め。

50m走のタイムで推薦されたけど、面倒そうだし俺のキャラじゃないし、正直やる気はなかった。

でも帰る直前、



「普段の黒澤君から想像出来ないっていうのも、ギャップがあって私はいいと思うよ!」



なんてキラキラした目で言われたうえに、



「一緒に頑張ろうね!」



って笑顔を向けられて、ときめかない奴なんていないだろ。

…この時、顔が赤くなったのはあいつには絶対に言えない。


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