犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
そう言ってにかっと笑うのは、親友の石塚 奏音。
中学から一緒で、クラスが離れてもちょくちょく遊びに来ていた。
「来年は同じクラスなれるといいよな~」
「そうだな。」
「もちろん、あの子も一緒がいいんだろ?」
「………」
「え、否定しないんだ?」
「………うっせ…」
今まさに考えていた事を言われ、言い返せない代わりにに軽く睨んだ。
「ごめんごめんって! そんな睨むなよ…ってか、離れたくないなら告ったらいいのに」
「…それが出来るなら、今頃悩んでねぇよ」
そう、奏音が言うあの子っていうのは遥のこと。
いろいろあったけど、好きだって気付くのに時間はかからなかった。
今の状況だけでも十分だし、運が良いのを願うしかないかな。
なんて思っていたら、奏音が急に立ち止まった。
それにつられ俺も止まり、振り返る。
いつにも増して真剣な表情をしていて、どうした、と聞こうとしたら奏音の声に遮られた。
「今のままでいいなんて、そんなのただの言い訳だからな! 本当はフラれるのが怖いだけだろ? …そんな弱気な紘貴、俺は知らない。」
「……っ、…」
奏音の言葉で、目が覚めた気がした。
気付けば俺は歩き出していた。
「……ちょっと忘れ物した」
咄嗟に思い付いた嘘だけど、奏音は追求せず、
「先帰ってるからな」
とだけ言って歩いて行った。