犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
当然俺は、立ち止まりもしなければ振り返りもしない。
無視して歩いていたら、不意に後ろに軽く引っ張られた。
そこでやっと後ろを見る。
案の定、俺の最も苦手とする女がいた。
「どおしたの? もう授業始まっちゃうよ?」
「……筆箱取りに戻る。だから離せ、村山。」
女というのは、同じクラスの村山 香澄。
普通なら、美人なこいつに話しかけられれば男子としては嬉しいんだろう。
だが、正直言って俺はこいつが苦手だ。
なぜなら、
「ペンなら私が貸すよ? だから、早く行こ?」
「別にいい。自分の使うし。」
だから早く離せ、無駄に近いんだよ。
ついでにそのわざとらしい上目遣いもやめろ、寒気がする。
香水も濃くて鼻が痛い。
…それに、お前のシャーペンって無駄にデコられてるうえに使いづらそうだし、絶対に嫌だ。
断っても離してくれない村山を無視して、俺はそのまま歩く事にした。
それでもまだくっついて来て話しかけてくる。
いい加減にしてくれ…
そう言って振り払おうとした時、二人の人物が視界に入る。
あれは奏音と…遥?
何で並んで歩いてんだ?
しかもあいつ…餌付けされてね?