犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
「…まず一つ、お前に遥をどうこう言える権利は無い。」
「…っ!」
「次に…村山は遥のどこが良いか分かんないって言ったけど、今はっきり言えるのは、お前より遥の方が良いとこ多いってこと。」
「……例えば?」
まだ納得しない村山は、俺に食いついてくる。
取り敢えず思い付くの全部言う事にした。
「…無駄に着飾らないし、村山みたいに香水臭くない。」
「く、くさっ!?」
「それに、一挙一動が面白くて見てて飽きない。何に対しても積極的で一生懸命。いろいろとセンスも良い。それに何より…」
一旦止めて、力強く言った。
「…元気に笑う遥が、好きなんだ。」
それがとどめを刺したようで、村山は口をパクパクさせ最後には、
「も、もういい!」
と叫んで走り去った。
一気に静かになった教室で、俺はため息をつく。
そして黒板に近づき自分で書いた文字を消す。
「……少しは自信ついただろ?」
………って、反応無しかよ。
「もう待たなくていいんだけど。」
俺はしゃがみ込み、教卓下に隠れるように座り込んでいる犬…ではなく、遥の頭を撫でる。