犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
「べ、別に…待って、ない、もん……」
「はいはい。飴やるから泣きやめ。」
飴、という単語に反応し顔を上げる。
「……ひどい顔だな」
「うっ…うっさい! 誰のせいだと思ってるよのっ!」
「俺だろ?」
「っ!? 分かってるなら言わないでよ!」
とか言いながら、さり気なく飴を取ろうとする。
だから俺が、
「待て」
って言ったら、
「――…っ」
ピタリと止まるから、つい笑ってしまう。
「何で待つんだよ」
「は、はぁ!? 紘貴が待てって言うからじゃん! ってか、笑わないでよ!」
「悪い悪い。ほら、よし。」
そう言うとバッと飴を取り、すぐさま口に入れる。
…本当、犬みたいだな。
「…何よ、ブドウ味じゃないじゃない…まぁリンゴ味も好きだけど」
「あるけど? ブドウ味」
「ちょっ、何で先に言わないのよ! もう食べちゃったじゃん!」
そんなにブドウが好きなのか。
「そんなに怒んな。やるよ、ブドウ味。」
「本当っ!?」
もう一個飴をやると、嬉しそうに笑う。
「…さっき俺が言ったこと、覚えてる?」