犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
「このっ…バカ! バカバカっ!!」
と言いながら俺の胸を叩く。
…ま、痛くないけど。
「……わた…の…キス……のにっ…」
「え?」
「…私のっ! ファ、ファーストキス、なのに…よくも…っ!」
泣きそうな真っ赤な顔で訴えてくる。
……ファーストキス、だったのか…
そういえば、付き合って結構経ったけど、それっぽい事してなかったな…
内心申し訳なく思いながら遥の頬にそっと触れる。
「…じゃ、やり直すか」
「……バカ…」
そして今度は、ゆっくり顔を近付け、優しくそれを重ねる。
窓からは夕日が差し込み、教室はオレンジ色に染まろうとしていた。
―――
―…
そんなこんな(?)で、俺たちは一緒に帰ることにした。
「紘貴って、よくいっつも飴持ってるよね?」
「そりゃ、お前の機嫌をとるためにな。」
「はぁ!?」
「冗談。元々俺が甘党だから、常備してんだよ。たまにチョコも持ってる。」
「え!? 初耳!」
「だろうな。…つーか、あんまはしゃぐな。 手が疲れる。」
「うぅ…だって、一緒に帰れるなんて嬉しすぎて…」
「……別に、言えば部活終わんの待つのに」
「えぇっ!? それはさすがに悪いよ!」
「嫌ならいいけど。」
「ああぁあぁ! ごめんなさい! 待ってて下さいぃ!」