犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
早口でそう言って黒澤君の横を過ぎる。
廊下に出た時、私は黒澤君を振り返り笑顔で言った。
「もしリレー出るなら、一緒に頑張ろうね!」
今度は目線を合わせたまま、黒澤君は少し目を見開いた。
そんな黒澤君を置いて、私は廊下を走って行った。
黒澤君、走ってくれるといいなぁ…
なんて思いながら。
教室にいる黒澤君が顔を赤くしていたなんて、当時の私は微塵も思っていなかった。
――――
――…
次の日のHR、選抜リレーの男子枠を決めるのかと思いきや、誰もが予想しなかった事が起こった。
「男子の選抜リレーだが、黒澤がやってくれる事になった。頼んだぞ、黒澤!」
えぇっ!?
私は驚きのあまり、黒澤君の席を振り返る。
「………」
黒澤君は相変わらず無表情で前を向いていた。
…もしかして、私のお陰かな!?
なんて、そんな訳ないか(笑
心の中で思いながらも少し恥ずかしくなって、私も前を向いた。
丁度その時、黒澤君が私を見ていたとも知らずに。