犬系彼女 -飴はブドウ味派- 短編
それからは、黒澤君と良く話すようになった。
無口なのかと思ってたけど、案外話せる人であっという間に打ち解けた。
…でも、一つ問題があったんだよね。
それは…
「あれ? 黒澤君がいない…」
練習前に先生に呼ばれ、話を終え戻って来ると、下駄箱で待っていると言っていた黒澤君が見当たらない。
「またかぁ…」
黒澤君はよくいなくなる。
それでも、どこへ行くか言ってくれれば文句は無いのだけれど、彼の場合は違う。
ちょっと目を離した隙に、フラ~っとどこかへ行ってしまう。
「…探しに行くかっ!」
そう言いつつ、向かう場所はだいたい決まってる。
今日みたいに天気のいい日は…
「あっ、いた!」
大抵、中庭の木陰で寝ている。
小走りで近寄り、穏やかに眠る黒澤君を見下ろす。
ふと隣を見ると、どこから来たか分からない野良猫が一緒に寝ていた。
「なんか、猫みたい…」
風に揺れる綺麗な黒髪を眺めながら、そう呟いた。
「…俺が猫なら、あんたは犬だな」
「ふぇっ!?」
不意に下から聞こえた声に驚き、間抜けな声が出てしまった
見ると、黒澤君が寝転がったまま私を見上げていた