それでは最後に
代わって当人。


酔った勢いで奇跡的な告白台詞を紡ぎだしてしまった名倉俊介は、急激に身体からアルコールが抜けていくのを感じた。さながらアスファルトの上にこぼした水が蒸発していくように。





-違う。何か違う。


「(あれ?なんかちがくね?ここは吹き出すかぽかーんとなるかそうじゃなきゃぶん殴るところじゃないの?)」


目の前の女の反応を秒単位で確認しなおす毎に妙に頭の中がクリアになり、自らの全身から物凄い勢いで血の気が引いていく。


「(いやいやちょっと待っておかしいよこれ絶対おかしいって。なんで目え逸らすの?何で顔赤らめてんの?いや人を外見で判断しちゃいけないって言うけどお前一見してそんなキャラじゃねーから!だからOK分かったとりあえず落ち着こうハーブの香りを想像してごらんほうら落ち着いた。うん落ち着いたね?だからそんな上目遣いで見るのはやめようっつうかあれだ、一度整理しよう。いいか肉まんが無かったから代わりに君をくれとかよく考えたらすっごい失礼だよね?普通の人ならよく考える過程を経なくとも分かることなんだが君の場合は特別にもう一度俺の言葉を反芻するチャンスをやろう。いいかいステファニーりぴーとあふたみーだ。肉まん>>お前。お前<<あんまん。理解したか?したならきっと俺達笑いあえてるよ。ところで俺はいつまで指さしてればいいんだ?このポーズすこぶるカッコ悪いと個人的には思ってるんだが意外とナウなヤングにバカウケなのかな?今度原宿あたりで試してみようかしら。ああ代官山は無理だレベル高過ぎ)」


いささか思考を錯乱させてはいるものの、俊介の望みは基本的に一つだけだった。

「(早く…)」




「(…早く何か喋ってくれっ…)」


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