それでは最後に
そんな二人の勝手な想像を知ってか知らずか、紗祐里は一向にネタバレをする気配を見せない。


「えっと…いきなりそんなこと言われてもどう答えていいか分かんないし…」


うつむきながらそう答えた紗祐里の姿は紛れもなく本気だった。

後ろから物品を整理する振りしてちらちら見ている奈津希にも、最早他人の振りをする気もないのか雑誌コーナーから首を百度くらい曲げてレジの方を凝視している坂本にも分かるくらい。




本気だった。


これが演技なら、彼女がコンビニ店員のアルバイトでちまちま稼いでいることは彼女自身にとっても日本の女優界にとっても大きな損失である。



そんな紗祐里の姿を見て、俊介の心に先程までとは全く違う思惑が芽生える。


焦り。居たたまれなさ。不安。後悔。


それらとは対極に位置するはずの情動が、衝動が、ふつふつと。



ふつふつふつふつふつふつふつふつと。
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