それでは最後に
「…は?」




その言葉に一番早く反応したのは、一番鈍感だと思われた紗祐里だった。



「いやあごめんなさいね、実は…」


事のあらましを喜々として説明する明。彼の口から言葉が出て来る度に、目の前の茶髪店員の表情が阿修羅の様なおぞましいものに変わって行く。気付かずにペラペラ喋り続ける明。
この小口紗祐里という女、確かに美人ではあるのだが、万人に受けるような顔立ちでは無いのも事実。


道を歩いていて声を掛けられることは少なくないが、少しでも不快さを顔に出せば、向こうから逃げて行くのが殆どだった。多少しつこい輩でも、一瞥をくれてやれば大抵は諦めてくれる。
生まれついてのその三白眼は、時に便利であり時に不便だった。


そして。


今その三白眼に睨まれ、ニシキヘビを前にしたアマガエルと化しているのが名倉俊介である。
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