それでは最後に
いたたまれない。



俊介は無理矢理目を瞑った。まぶたがひくひくして閉じることすら一苦労だったが、何とか視界を覆うのには成功したようだ。


同時に紗祐里の視線の呪縛から解放される。
体が動く。声が出る。




「(…よし!)」


そのことを確認した俊介は、かっと目を見開く。

一瞬たじろぐ紗祐里。



「ご、ごごめんなさい!」


光の早さで上半身を前方に傾けながらそう言うや、コンビニの自動ドアに向かい猛ダッシュする。


「あ、おい…」


明の呼び掛けを無視し、駆け抜ける。


自動ドアが自分の姿を認識し、開くまでの時間がやけに長く感じられた。
だがもう全ては終わり。このままダッシュで明のアパートまで戻り、そして金輪際このコンビニには行かない。近付かない。



…それで終わり。



自動ドアが開く刹那、最後にもう一度振り返る。



…そして見てしまったのだ。右手を支点にし、セミロングの茶髪を振り乱しながらカウンターを跳び越える紗祐里の姿を。
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