それでは最後に
「…そろそろかな」


明がちらっと店の外の方に注意を向け、通りを真っ赤な顔でプラプラ歩いて来る人影に目を止める。

「…来た」


「いらっしゃいませー」


茶髪店員の元気な声が自動ドアのベルの音と重なる。


「………」


意外としっかりした足取りで店内に入って来た俊介は、明と登の方を軽く見遣り、にやりと笑った後レジに直行する。


その様子を見ていた登が何とも言えない表情で呟く。


「さかもっちゃん」


「んー」


明は子供の様に目を輝かせて事の成り行きを見守っている。


「ヤバいかも知れんね。本当に奇跡起こしかねんよコレ」


明はその言葉の意味をいまいち理解していないようだった。


「止めんなら今の内…ま、一応俺は忠告したかんね」


そこまで言うと、登は読んでいた雑誌を棚に戻してさっさと出て行ってしまった。


「あ、おい…」


明は一瞬登を追おうとしたが、すぐにレジの方に注意を集中し直す。


もう、俊介はレジの前に立っていた。
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