雨の日、キミに欲情する
第一章
「コレ、野々村花菜。お前に担当してもらう」
PC画面を睨みながら、データを作成をしていた私の右後ろから声が
聞こえた。
と、思ったら無造作にクリッピングされた資料が、私のデスクに置かれる。
振り返ると、野島さんが両腕を組んで私を見下ろすように立っていた。
野島亮介、30歳。
私が勤めるデザイン会社、クラウドアートのデザイナー。
「え? これは、野島さんの担当では...」
「ん。そうなんだが、お前にも担当してもらおうと思って」
台形に整えた顎髭を蓄えている野島さん。
顎髭が精悍な印象を与えるが、中性的な顔立ちをしていて、所謂、イケメンと分類されるヒトで。
デザイン会社に勤務しているから、服装は自由。野島さんはダークブラウンのジャケットの下は黒いTシャツに、スキニージーンズ。
アシンメトリーな茶髪の髪が少し掻き上げながら、目を細めて私に優しく微笑むから、私の心臓はドキっとした。
この立ち姿に、この表情。
惹きつけられない女性なんて、いないんじゃないの?
私も御多分にもれることなく惹きつけられてしまったようで...自分の顔が赤くなっていることに気付く。