雨の日、キミに欲情する
第一章

「コレ、野々村花菜。お前に担当してもらう」

PC画面を睨みながら、データを作成をしていた私の右後ろから声が
聞こえた。


と、思ったら無造作にクリッピングされた資料が、私のデスクに置かれる。

振り返ると、野島さんが両腕を組んで私を見下ろすように立っていた。

野島亮介、30歳。

私が勤めるデザイン会社、クラウドアートのデザイナー。

「え? これは、野島さんの担当では...」

「ん。そうなんだが、お前にも担当してもらおうと思って」


台形に整えた顎髭を蓄えている野島さん。

顎髭が精悍な印象を与えるが、中性的な顔立ちをしていて、所謂、イケメンと分類されるヒトで。

デザイン会社に勤務しているから、服装は自由。野島さんはダークブラウンのジャケットの下は黒いTシャツに、スキニージーンズ。

アシンメトリーな茶髪の髪が少し掻き上げながら、目を細めて私に優しく微笑むから、私の心臓はドキっとした。




この立ち姿に、この表情。


惹きつけられない女性なんて、いないんじゃないの?



私も御多分にもれることなく惹きつけられてしまったようで...自分の顔が赤くなっていることに気付く。








< 2 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop