雨の日、キミに欲情する
「ナノ!!」
大声を出して、圭ちゃんが私の方に走り出す。
「え? あ、えぇー?」
突然走り出した圭ちゃんの行動に驚いて、私は素っ頓狂な声を上げたが、その後の言葉が続かない。
だって私はーーー圭ちゃんに抱き締められていた。
え? え? ええ??
何が起こったのか、わからない。
いや、なんで……私、抱き締められているの?
久しぶりに会ったから?
だからと言って、いきなり圭ちゃんが私を抱き締めるワケがない。
口をパクパクしながら、圭ちゃんの顔を見上げた。
優しく、そして少しだけ困ったような顔をして圭ちゃんは笑った。
圭ちゃんの薄い色素の瞳。
長い睫毛。
圭ちゃんが私を見つめる、その視線ーー私の心臓が跳ねる。
だって……久しぶり会った圭ちゃんは、もう大人の男の人で。
私が知っている以前の圭ちゃんよりも、もの凄く格好良くなっていたんだもの。