雨の日、キミに欲情する
大人の男の人だ。


フワリといい匂いがする。

香水っていうモノなのかーーー圭ちゃんの香りは、男の人の匂いがした。


その匂いが鼻腔を擽ると、私の心臓が、急に早くなってドクドクと血が巡る音がした。

血が、凄い勢いで全身を駆け巡り、身体が熱くなるような感覚に襲われて……


な、何? コレ?

ワケがわからない。


「あ、あの、あの、わ、私......」

「黙って!」

圭ちゃんの声が、私の声を遮る。


圭ちゃんは私の後頭部に自分の手を当て、そのまま私の顔を自分の胸に押し付けた。


トクントクンーーと、音がした。


私の音?

違う。圭ちゃんの音だ。


圭ちゃんの心臓の音。


少し早く拍動している?


私の耳から聴こえる音。

それは二人の心音と、ビニール傘に当たる雨音。


この状態に、私の頭が混乱して、どうしていいか………わからない。


だけど、一つわかった。

私は圭ちゃんに抱き締められて、圭ちゃんが男の人だって、異性なんだとーーー初めて意識した。

だから、私の全身がこんなにも熱くなって……


こんなにも心臓がバクバクしているんだ。

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