雨の日、キミに欲情する


圭ちゃんから離れたいのに、離れたくない。

でも、抱き締められているのは、やっぱり恥ずかしくて......。


圭ちゃんから少し離れるように、身体を後ろに反らしてみるけど


...圭ちゃんの腕は私から離れない。


離れない、その腕を見て気付く。



圭ちゃんのビニール傘は、二人が入るには少し小さくて、圭ちゃんの肩も腕も濡れ始めていた。


いや、その前に、びしょ濡れの私を抱き締めた時点で、圭ちゃんの身体は濡れてしまったよね?


「あ、あの...圭ちゃんが、濡れちゃうよ...」


「......」



はぁっと大きな溜め息をついた圭ちゃん。



ジーンズの後ろポケットに手をやったと思ったら、携帯電話を取り出して、電話をかけた。


「...もしもし? 光太? 悪い、バスタオルとナノの上着、ジャケットか何か持って来て。」

……あ。


お兄ちゃんに電話したんだ。
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