雨の日、キミに欲情する
私が泣いている事に気付いて、圭ちゃんは
「ナノ......」と、
囁くように名前を呼んだ。
だけど、私は返事が出来ない。
だって、今、返事をしたら、私はきっと、大きな声で泣いてしまうから。
何も返事をしない私を圭ちゃんは、ギュっと私を抱き締める力を強くした。
何も言わずに、ただ黙って、私を強く抱き締める圭ちゃん。
その優しさに耐え切れず、私は「わぁぁぁぁぁ」と声を上げて泣きだしてしまったのと同時にお兄ちゃんがやってきた。
雨の中、走ってやってきたお兄ちゃんは黙ったまま、私の頭にバスタオルを被せた。
パーカーを羽織らしてくれた時に、圭ちゃんの抱き締める手は私から離れた。