雨の日、キミに欲情する


野島さん達がドア出た時、私は柴崎 圭の前、最も近づく距離になっていた。


顔を見ず、会釈をして通り過ぎようとした時


「...ナノ」


私を呼ぶ、あの懐かしい声がした。



私はゆっくりと、その声の方向ーーー柴崎 圭に振り向いた。


「ナノ......久しぶりだな」


目を少し細めて優しく、柔らかい笑顔を見せる柴崎 圭。


いや、柴崎 圭じゃない。


私の知っている圭ちゃんがそこに居た。


「......圭ちゃん」

私が呟くように名前を呼ぶと、圭ちゃんは右手の人差し指をすっとかざして、私の頬を優しく撫でた。



「大きくなったな...ナノ」


クスっと喉を鳴らすように……圭ちゃんが笑った。



前と変わらない笑顔を、圭ちゃんは私に見せてくれた。

つーんとした気持ちが、込み上がる。




ーーーあぁ、圭ちゃんの笑顔だ。

あの頃のままの笑顔だ。
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