雨の日、キミに欲情する
第二章
夕陽が電車内をオレンジ色に染めていた。
車内はガタンゴトンと電車が刻むリズムに、雑談に興じた学生達の笑い声が時折聞こえるが、車内には人が少なくて。
私と横並びに笹島さん、野島さんの順でシートに座っているが、会話もなく、微妙な空気が流れていた。
私達が背にしている窓から差し込む夕陽で、私達の足元は自分達の長く伸びた影。
その影は動く事もなく静止しているようで、
私達だけが居心地の悪い静寂を保っているような気がした。
私と同様の思いで、耐え切れなかったのだろう。
笹島さんが私に話しかけた。
「えっと...柴崎さんが野々村さんのお兄さんの友人ってことは、野々村さんも柴崎さんと親しかったの?」
何か話が出来る事に少しほっとした。
だけど私は笹島さんの質問に、どう答えればいい?
圭ちゃんは、お兄ちゃんと親しいけど、私は?
友達の妹ってだけで....
親しかったと聞かれても、私は子供の時だけしか会ってないんだよ?
今日まで会っていなかったのに、私は圭ちゃんと親しかったって言えるの?