雨の日、キミに欲情する
「そ、そうですね。親しかったって言えば、親しかったかも?」
自問自答した割には曖昧な返答しか出来ず、膝に置いたバッグを、ギュっと握り締める。
「かも?...って、なんで疑問形?」
笹島さんは苦笑いしながら、私の顔を覗き込むように見る。
確かに...疑問形はおかしいですよね。
チラッと横目で見ると、視界の端には野島さんが無表情で真っ直ぐ前を見ていた。
ふーっと息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
「私の兄は6歳上なんです。兄と柴崎さんは幼馴染みって言う関係で...その、私は幼馴染みになるのかもしれませんが、兄とは年が離れ過ぎてるので、その...」
「あ、そうか。野々村さんが子供の時って、お兄さん達は中坊もしくは高校生って事か!」
「え? あ、はい」
「そりゃあ、お兄さんとは柴崎さんが幼馴染みでも、野々村さんとはあまり関わりが無いか。うん。そうだよね」
さすが営業さん。1を言って10を知るって感じで、私と圭ちゃんの位置関係を理解してくれた。
でも、他人の言葉で表されると、少しチクっと棘が刺さる。