雨の日、キミに欲情する


「...担当者の名前」

その声の方向に、はっとして視線を向ける。

さっきと同じ、真っ直ぐ前を見続け、表情を変えない野島さんが何を考えてるのか?

......全く読めない。


でも、わかっている事がある。

それは...恐らく野島さんは、柴崎 圭が圭ちゃんだと気づいてたのかと聞いているんだろう。



「同性同名かと...」


私の返事が野島さんの求める答えなのか、自信がなくて歯切れの悪い返答をしてしまった。


膝の上に置いているカバンを握り締める私の手。

その手の力は更に強くなり、さっきよりよりも強い力で握り締めていた。



「ふ~ん...」

野島さんは、顔色ひとつ変えず、前を向いたまま。

その返事の意味も、何を考えているのか


......私には、わからない。


わからないから、胸に重たい気持ちが残る。
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