雨の日、キミに欲情する

「何も無いよ」


と、私が作り笑いをして答えれば、千沙は少しだけムッとした顔で私を見る。


「嘘だね。だって花菜は元気のない顔しているし、野島さんは戻ってから不機嫌そうな顔しているし、何かあったんでしょ?」

「え?そんな事ないんじゃない...かな?」


会社に戻ってからは、いつもの野島さんになっていたし、不機嫌そうな顔ってのは、あの時に見せただけだった。

どちらかと言うと、私だけが今もギクシャクしているだけで...


野島さんは、いつもの姿に戻ってる。私はそう思った。


だけど私だけが野島さんにどう接すればいいのか、戸惑ってしまったままの状態だっただけで。

「千沙の考えすぎじゃない? 野島さんは不機嫌でもないし...いつも通りだと思うけど...」

気のせいだという私を、千沙は納得出来ないという表情で見る。
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