雨の日、キミに欲情する
思考を別の世界に飛ばしてしまったような顔して、笹島さんは口をポカーンと開けたままだ。
そんな笹島さんを無視して、千沙は話を続けた。
「彼女持ちが、花菜に柴崎さんとやらに惚れるなとか、何を言ってるのか...」
これ以上、不愉快な事はないというように顔をしかめる千沙。
それでもチーズボールを口に入れるのは、やめない。
モグモグと口を動かすのと、眉間のシワはアンバランスだと思った。
思考を別の世界に飛ばしてた笹島さん。やっと戻ってきたのか、我を取り戻して声を荒げる。
「え? え? えー? ちょっと待ってよ! 千沙ちゃん!何、ソレ? 俺、野島さんが彼女いるって知らねーよ!」
「あら? 男同士で、彼女の話とかしないのですか?」
「しねーよっ! つーか、仕事してる男同士が、いちいち彼女の話とか、そんな話題しねーしっ!」
「あ、そうなんですか? 男の人って、そーゆーものなんですか?」
はぁーと溜め息ついた笹島さんは「女の子達がするようなハナシ、仕事仲間で話さないモノですよ、男は」と、ビールをグイッと飲む。
「で、なんで千沙ちゃんが野島さんに彼女いるって、知ってるの?」
苦虫を噛み潰したような顔で、笹島さんはチラッと上目遣いで千沙を見る。