雨の日、キミに欲情する
「野島さんがね、惚れるなって言ったの、わかる?」
笹島さんが力なく、優しく笑った。
「...はい」
「花菜の幼馴染みの柴崎さんは、その時、どうしてたんですか?」
「え? ああ、柴崎さんね...」
笹島さんは眉毛を下げて、困った顔をして、私の顔を見た。
「どうもしてないよ。佐々木さん達が罵り合ったのも、ウチの会社の中だったし、柴崎さんはその場にいないし...」
「いや、そーゆーことじゃなくて...」
「わかってるよ。ま、俺は当事者じゃないし、全部聞いた訳じゃないからね。ただ...」
「...ただ?」
私は聞き返した。
「罵り合った時に二人が言った言葉を拾うなら...お互いが同意した事で、柴崎さんから誘った訳じゃないって。柴崎さんとしては、来る者は拒まないし、去る者は追わない。彼女がいても、一回限りの大人の付き合いを平気でする自分に期待するなって、二人にはそう言ってたらしいよ」
「..それでも小野田さんは諦められなかったって事ですね。顔が良くても、女癖が悪過ぎる...ヒドい男」
千沙は苦々しい顔をして、ヒドい男と言った。