雨の日、キミに欲情する
私とお兄ちゃんは、お互いに一人暮らしをしている。

お兄ちゃんが就職してから家を出たように、私も家を出た。

女の子の一人暮らしは危ないって、反対されたけど、会社から実家まで電車で一時間はかかる。

仕事で残業する事もあるし、会社から近い場所に住みたいって、我儘を許してもらったのだ。

「え? 帰れるけど...なんで?」

『母さんが、家族みんなでご飯を食べに行こうって言ってるんだ。...俺は梓を連れて行く』

「それって? もしかして?」

『ん、まぁな』


と照れくさそうに答えるお兄ちゃん。

お兄ちゃんには、梓さんって彼女がいる。梓さんも実家に遊びに来た事はあるのだけど、改めてみんなで一緒に、それも家族でご飯を食べに行くって事は...


「おめでとう! お兄ちゃん、やっと結婚するんだ! おめでとう!」

『はは。やっと結婚って、祝いの言葉の割には、きついねー』

「だってぇ。お兄ちゃん、梓さんと付き合って5年でしょ? いつ結婚するのかって思ってたんだもん」

『はははは。まぁ、そうゆう事なんで...花菜、祝ってくれて、ありがとな』

電話から聞こえるお兄ちゃんの声は、照れ隠しで苦笑いしているけど、嬉しそうだっていうのが、わかった。
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