雨の日、キミに欲情する
きっとお兄ちゃんは今、顔が真っ赤に違いない。

そんなお兄ちゃんの顔を思い浮かべるのと同時に、圭ちゃんの顔も浮かんで...。


「お兄ちゃん、あのね...」

『ん?』

「...あの、今日さぁ、仕事で...圭ちゃんに会ったよ」

と言いにくそうに言うと、お兄ちゃんは『え? 圭に?』と、驚く声を上げた。


「うん...お兄ちゃんによろしくって...圭ちゃんが言ってたよ」



ーーーー野島さんに圭ちゃんがお兄ちゃんの友達だと伝えた時、圭ちゃんは野島さんに「そうですよ。彼女の兄、光太は私の友人なので」と言った。

その時の圭ちゃんの野島さんを見る顔は、笑っているのに、すごく冷たい目をしていた。

そんな圭ちゃんを野島さんは睨むように見つめて言う。

「では、前から知ってた訳ですね」

「そうですね」

圭ちゃんは淡々とした口調で言ったけど、まるで野島さんを挑発するようにクスっと笑った。

野島さんの片方の眉毛がピクっと釣り上がる。

「...では、今後はクラウドアートの野々村花菜として、よろしくお願いします」

野島さんは静かな口調で話したけど、その声は無理に怒りを抑えているみたいで。


二人の間は、一触即発のような緊張した空気が流れているように見えた。
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