雨の日、キミに欲情する
私の知っている圭ちゃん。

それは8年前の圭ちゃんで、今は私の知らない圭ちゃんが柴崎 圭だった。

顔は知らないけど、名前だけは知っている小野田さんと柴崎 圭は大人の関係を持っていた。

私の知らない圭ちゃんは、欲望にまみれた汚い男の人に変わったのかと思うと、嫌悪感という感情が、ぽつんと心に小さな黒いシミとなって落ちる。

その黒いシミが、ジワジワと広がる恐怖感が湧き上がる。

黒いシミを消したい。広がらないで。

柴崎 圭というヒトは、私の知らないヒト。

柴崎 圭は圭ちゃんだけど、圭ちゃんじゃない。


そう否定する事で、黒いシミを消せる気がした。


今日は何も考えずに寝たい。


色々あり過ぎたから。

何も聞かなかった、知らなかった事にしてこのまま眠れたらいいのにって思っていると、ウトウトと睡魔が私を襲い始めた。


よしっ! このまま寝ちゃおう...

ん?

何か忘れてる...


あっ! 佐々木さん!



野島さんに告白したんだ!



眠りたかった私は、また悶々と考えこんで、そのまま朝を迎えて、結局、一睡も出来なかった。
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