雨の日、キミに欲情する
手前から社長室、応接室、会議室、ロッカールームがあり、私達社員が最も使うのはロッカールーム。

ロッカールームは一応、手前が男子、奥が女子に区切られているものの、更衣するというよりは、デスクにしまう事が出来ない荷物を置く為のスペースとなっていた。


ウチの会社は服装は自由。

営業や事務の人達はスーツを着ているけど、私達デザイナーはラフな私服を着ている。

今日の私の恰好はTシャツにグレーのパーカーを羽織って、下はジーンズで、更衣する必要はない。

ただ、昨日のように急にクライアント先に行くときなどはスーツに着替える必要があって、そんな時の為に、私はスーツや着替えをロッカーに置くようにしていた。

昨日はスーツのまま直帰したから、私は予備のスーツをガーメントバッグに入れて出社した。

だから私はガーメントバッグに入れたスーツを置く為に、ロッカーに向かっていたのだけど。


誰もいないはずの応接室の前を通ると、ガタッ!と、大きな物音がしたので、驚いた私は飛び跳ねながら、「ヒィィィ!!」大声をあげた。

怯える私の目の前で、応接室の扉がガチャと音を立てて開く。



「なんなの、その声」



出てきたのは白い半そでTシャツとジーンズ姿の野島さんで。


呆れた顔をして私を見つめていた。
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