雨の日、キミに欲情する
野島さんが居た事に驚いた私は、オドオドした口調で言う。

「だ、誰もいないって思って...」

「だから、そんな変な声を出したワケ?」

「はぁ...あの...ビックリしまして.....」


「プハッ!」と吹き出した野島さん。


「俺の方がビックリするわ」


半笑いの笑みを浮かべた後、野島さんは前髪を片手で掻き上げながら、応接室のドアを閉めた。

少しだけ私に背を向けたから。



ーーーあ、髪...寝癖のついている。


その寝癖のついた後ろ髪を見つめて


「泊まったんですか?」

と聞けば、


「ん? まぁな...。ちょっと他のを仕上げておこうかと思って」

野島さんは閉めた応接室のドアに両腕を組んだまま凭れて、小さなあくびをした。


うっ、この姿。

寝起きの状態で、これこそフェロモンがダダ漏れしているっていうんじゃないだろうか...。

顔がカーっと熱くなってしまった私は、思わず野島さんから目を逸らしてしまったのだけど...

これじゃあ挙動不審すぎるっ!


何か言わなくっちゃ。えーーっと...

「だ、大丈夫ですか?」

「ん?」

「いや、その、あまり寝てないんじゃないかと...」

チラと上目づかいで野島さんを見た。
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