雨の日、キミに欲情する
「...野々村」

野島さんがドアに凭れた身体を少し起こして、すーっと私の顔に右手を伸ばした。


え?

野島さんの右手の指が目の前に近づいてきたので、咄嗟に目をギュっとつむった瞬間。

野島さんの指は私の眼鏡のブリッジつまんで、取り上げる。




な? ...何?


眼鏡、とられた?


「お前の方こそ寝てないだろ?...目、充血してる」



「--ーーッ!!」


バサっ!と、音を立てて、私が持ってたガーメントバッグが足元に落ちた。


それは私が両手で顔を塞いだから。



「...なんで、顔を隠す?」

野島さんは自分のもう片方の手で、顔を覆ってる私の両手の右手首を掴む。

「手、どけろよ」

「...い、イヤです」

両手で顔を覆ったまま、下を向こうとした。

でも私の右手首は野島さんに掴まれたままだから、そのままの状態では上手く俯けなくて。

「...」

何も言わない野島さん。


掴んだ手の力を少しだけ緩めてくれたから、私は手の指を広げて、その隙間から野島さんを覗き見たのだけど...
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