雨の日、キミに欲情する
野島さんが私から離れても、私はぼーっとしたまま、そのまま立ちすくんでいた。

ああ、きっと、私の頭の中は理解不能で、確実におかしくなっているんだなって。


そう思っているとーーーー




野島さんは私から取り上げた眼鏡を見つめながら、


「度の入ってない、黒縁メガネしてて、よくいうよ」


と、呆れたような声を出した。



そして、私の足元に落ちたガーメントバッグを拾い上げると、「ほら..」と、私にガーメントバッグを突きだした。


そのままガーメントバッグを受け取ったのだけど、私の顔を下を向いていた。

それは、野島さんと目を合わさないようにしたからなんだけど、野島さんは苦々しいと言わんばかりの口調で、私に言った。


「...顔を隠す理由って、アイツのせいじゃないよな?」



え? アイツって...?


「...ま、いい。早く、荷物を置いてこい」


と言って、野島さんは立ち去った。



な、なんだったの?

たった今、起きた状況が夢でも妄想でもない...んだよね?


ヘナヘナとその場に座り込んでしまった私は、呆然としながら赤くなった顔の頬に両手を添えてーーーハッとする。


私...眼鏡、返してもらってない!



「やだぁ...どうしよう」

と、呟いて、私は赤くなった顔をそのまま両手で覆った。
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