ずっと隣で・・・
英斗の言う通り、そこのお店の定食は美味しかった。
「その後、彼氏とはうまくいってんの?」
「うん」
「・・・そっか。松本さんの次は千鶴じゃない?」
二人きりになると葉山さんから千鶴と呼び方が変わるのは
変わってなかった。

不思議だった。
英斗の言葉には刺々しさがなくなっていた。
今の質問だって本当に友達との会話の様だった。
「・・・そう・・なるかな?」
だからか私も前の様に英斗に対しての警戒心が無くなっていた。

「本当か・・・よかったな。
あのさ・・・あの時・・・千鶴が俺の家に来なかったら、俺達
どうなってたかな・・・・」

「・・断言できないけど・・・遅かれ早かれこうなる運命だったのかなって」
英斗は納得したようにフッと笑った。
「遠恋はもうこりごりだな・・」
「そうなんだけど・・私は懲りずに遠恋中だよ」
英斗は思い出したかのようにごめんと手を合わせた。
そして少し間があくと・・・
「実はさ・・俺、彼女が出来たんだ」
「えええ!本当?!」
英斗は少し照れながら頭を掻いた。
「取引先の子なんだけどね・・・・」
「よかったね」
それは心からの本心だった。
「もう、前みたいな失敗はしないよ」
「そうよ。もう彼女を泣かせる様なマネはしないでね。
でも、篠原君が幸せそうでよかった。」
「千鶴にそう言ってもらえて嬉しいよ・・・
本当にあの時は申し訳なかった。ごめん」
英斗はおでこがテーブルにくっつくほど頭を下げた。
「篠原君!頭上げて」
「千鶴・・・」
「弦と別れて、人をすきになることをやめた私にまた、人を好きになる
喜びを教えてくれたのは篠原君・・・いや英斗だった・・・こんな結果になったけど
私は後悔してない。今はそうはっきり言える。ありがとう」


私と英斗は本当に意味でのさよならが出来た。
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