ずっと隣で・・・
どのくらい経ったのだろう。
江里子さんは重い口を開けた。
「あの人が好きだから心配かけたくなかったのよ。あの人は物を作っている時が
一番イキイキしているし、それを見ているのが私の幸せでもあったの。
事故は私の不注意だし、彼に心配かけたくなかったの。でも・・・
彼には伝わらなくて、売り言葉に買い言葉ってわかってたけど・・・・
でも悔しくって、私の想いって伝わってないのかなって・・・・」
私は涙を堪える江里子さんの手を握った。
「江里子さん。須田さんも同じ思いだったんじゃないですか?
江里子さんの事を愛しているから、江里子さんが大変な時に何も知らずに
いた自分が腹立たしかっと思うんです。
わかっていたら飛んで帰って来たはずです。
でもそれは全て江里子さんの事を愛しているから・・・ここ大事ですよ。
ただお互いにに少し言葉が足りなかっただけなんじゃないかなって
私は思うんです」
江里子さんは少し驚いた様子だったがすぐに諦めに近い表情で自分の
手元を見つめた。
「でも・・そうだとしてももう遅いわ。一度流産してる私なんかと
ヨリを戻すわけ・・」
「そんなの言ってみなきゃわからないじゃないですか。
なんで自己完結しちゃうんですか?
それに江里子さんは須田さんの事をそんな心の狭い男だって思ってるんですか?」
「ち・・違う。ちがう・・・けど今さらどの面下げて会えばいいのよ。
時間が経ち過ぎたわ」
それまで黙っていた弦が
急に立ち上がった。
「だったら今から直接聞いてみればいいじゃないですか。
 江里子さんは俺に比べたら時間なんか全然経っちゃいないですよ。
まだまだ余裕。だから俺たちと一緒に名古屋に行きましょう」
急に男気のある発言をするもんだから私も驚いた。
だがそれ以上に驚いたのはやはり江里子さん本人で・・・・
「え?本気で言ってるの?」
江里子さんは動揺を隠しきれない様子だった。
「本気以外何があるんですか・・」
「江里子さん。」
私も立ち上がった。
すると江里子さんも立ち上がった。
「・・・・わかったわよ・・・」
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