ずっと隣で・・・
「ね!そういえば、ここ洋風居酒屋なんだけど
なぜか揚げ出汁豆腐があってそれも最高においしいんだよ。」
私は何とか話題を変えた。
それからたわいもない会話が続くも
あまり内容は憶えてない。
そして・・・
最後にお約束のナポリタンを食べた。
だけどマスターの作るナポリタンと私の作るナポリタンの味は
似ていなかった。
だけどそれを口には出さなかった。
・・・いや出せなかった。

店を出るともう11時を少し過ぎていた。
「ごちそうさま」
弦が改まって頭を下げようとするので慌てて止める。
「いいって・・・高級レストランってわけじゃないんだし・・」
「でも俺には高級レストラン並みにうれしかったよ」
弦の言いたい事は何となくわかった。
「喜んでいただけて光栄です」

後は・・・帰るだけ
帰るだけなんだけど、心のどこかでもう少し一緒にいたいって気持ちがあった。
でも前回、私のせいで実家に顔を出せなかったんだから
もうここでさよならしなきゃ・・・そう思うのだけれど
どうしてもさよならが言えないでいた。
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