ずっと隣で・・・
「弦・・・」
「もうちょっとだけ待っててくれ。」
「うん」
「あと・・・今度指輪買うときは左のを買ってやるからさ」

目が潤む。
もう・・・こんなこと言っておいて京都に帰っちゃうとか
酷過ぎる。

すると場内アナウンスが聞こえた。
「もう行かなくっちゃ・・・」
私はとっさに弦のスーツの裾を掴んだ
「ちーづーる」
困った様な顔の弦がフッと笑う。

そしてチュッとほっぺたに軽くキスをし
「愛してる」と耳元で囁いた。

目頭が熱くなるのを悟られない様
私は
「バーカ。そんなの知ってるよ」って言ってやった。

そして弦の乗る新幹線の扉があいた。
「じゃ…行ってきます」そう言って片手を上げ新幹線に乗った。

行ってきます。
それはここに帰ってくるって意味を込めて言ったのだと思った。
だから私も
「いってらっしゃい」
と見送った。
< 80 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop