杉下家、姉弟の平和な日常
「俊也は帰らせていいでしょ!もう何なのよ!、剛のバカ!」
いや、その発言も相当ひどいと思うのは俺だけだろうか。
「でもね、そもそもの原因は、由梨絵ちゃんと俊也くんだよ。兄弟で腕組んで歩くとか、仲が良すぎるだろう」
剛さんの発言後、3人の間に沈黙が落ちる。
整理させてもらおう。
確か、姉は剛さんに浮気を疑られて怒っていた。
剛さんは、腕を組んで歩く姉を見て浮気疑惑を突きつけた。
俺は姉と仲がいいから足止めさられた。
「・・・剛さん、姉ちゃんに何て言ったんですか」
「え?『他の男の子とあんまり仲良くしてると妬ける』って」
以前にも、剛さんは俺に嫉妬心を抱いたエピソードがある。
何が悲しくて実の姉の彼氏に何度も焼き餅を焼かれるのか。
「間違いなく原因、それっすね。」
「他の男って俊也のことだったの?」
ようやく合点のいった姉が剛さんの胸を押して自分を抱きしめる男の顔を見上げる。
優しく垂れ下がる剛さんの眉は姉を癒し、俺は一件落着の気配に胸をなでおろす。
「うん、由梨絵ちゃんと駅でわかれただろ。ちょうど電車から二人が合流するのが見えて、由梨絵ちゃんがあんまり俊也くんとくっついて帰るから」
照れたように手を頭にやる剛さんに思わず声を上げる。
「「はあ?あれぁ?!」」
姉と揃って同じことを言ってしまい、お互い顔を見合わせてにらみ合う。