杉下家、姉弟の平和な日常
剛さんに話したことにはとても心当たりがあった。
俺がのんびり駅からの家路についていたら、背後から思いっきり姉に飛びつかれ、首が絞まりそうになるのをなんとか避けながら、必要以上にくっついてくる姉を引き剥がした。
それだけだ。
「やっぱり姉ちゃんが悪いんじゃねーか!だから日ごろから外でベタベタすんなって言ってるのに!」
天を仰いだ俺に、姉が剛さんの腕の中で体をねじりって俺の顔をきつく見据えて、公開姉弟口喧嘩開始のゴングが鳴る。
「なんでよ!家では大人しくされるがままじゃない」
「家の中では我慢するよ。外は自重しろ!」
「我慢って何よ。外ではダメな理由がわかんない!」
「俺が言ってるのは普通の、一般的な感覚なんだよ!両親が家でも外でもベタベタしすぎだからって変なとこで影響受けんな!」
姉がいつもこうして変な風に話をこじらせてしまうのだ。
俺は至極まともなことを言っているはず。
「うん、二人ともごめん。僕が悪かった」
「ほんとだよ」
折角剛さんが仲介役を買ってくれたのに、反射的に剛さんに失礼なことを履き捨ててしまう。
すかさず姉が反応する。